■ 経営者評価の分析結果
(1) 経営者による評価結果の概要
企業が開示した内部統制報告書における意見は、提出会社総数2,670社のうち、自社の内部統制が「有効」であると表明した企業が2,605社(全体の97.6%)であるのに対し、「有効でない」あるいは「不表明」であると表明した企業は65社(全体の2.4%)という結果になりました。
経営者評価 |
|
社数 |
割合 |
有効 |
2,605社 |
97.6% |
有効でない |
56社 |
2.1% |
不表明 |
9社 |
0.3% |
合計 |
2,670社 |
100% |
(2) 「重要な欠陥」の原因分析
重要な欠陥を識別し、自社の内部統制が有効でないと表明した企業において、重要な欠陥を識別した内部統制のプロセスを分析すると、「決算・財務報告プロセス」に起因する場合が最も多く、38件存在しました。順に、「全社的な内部統制」「その他の業務プロセス」となり、「IT全般統制」に起因した重要な欠陥を識別した企業は1社に止まりました。
また。経営者不正、従業員不正を問わず、不正の発生を根拠にして重要な欠陥を識別した企業も相当数に上りました。財務報告に係る内部統制の評価においても、不正の発生が大きな影響を与えたと考えられます。
プロセス名 |
重要な欠陥数 |
うち不正に該当するもの |
全社的な内部統制 |
18 |
5 |
決算・財務プロセス |
38 |
1 |
その他の業務プロセス |
8 |
2 |
IT全般統制 |
1 |
0 |
(複数の重要な欠陥を識別している企業もあり、集計は延べ数としていますので、重要な欠陥の数と「有効でない」と表明した企業の数は一致しません。)
(3)上場市場区分別の状況分析
上場している市場別に評価結果を分析すると、新興市場と言われるJASDAQ、ヘラクレス、セントレックス、アンビシャス、Q-Boardの上場企業に、比較的「重要な欠陥」を識別した企業が多いことがわかります。東証一部上場企業の「有効」以外の割合が1.3%であるのに対して、新興市場は5.1%と高い割合となっています。
|
有効 |
有効でない |
不表明 |
合計 |
「有効」以外の割合 |
東証一部 |
1,334 |
17 |
1 |
1,352 |
1.3% |
東証二部 |
328 |
3 |
1 |
332 |
1.2% |
大証一部・二部 |
166 |
6 |
0 |
172 |
3.5% |
名証一部・二部 |
59 |
1 |
0 |
60 |
1.7% |
札証 |
10 |
0 |
0 |
10 |
0.0% |
福証 |
18 |
0 |
0 |
18 |
0.0% |
東証マザーズ |
75 |
0 |
2 |
77 |
2.6% |
JASDAQ |
512 |
21 |
4 |
537 |
4.7% |
JASDAQ-NEO |
3 |
0 |
0 |
3 |
0.0% |
ヘラクレス |
66 |
3 |
1 |
70 |
5.7% |
セントレックス |
9 |
3 |
0 |
12 |
25.0% |
アンビシャス |
4 |
1 |
0 |
5 |
20.0% |
Q-board |
0 |
1 |
0 |
1 |
100.0% |
合計 |
2,584 |
56 |
9 |
2,649 |
2.5% |
(注)内部統制報告書を提出している非上場企業である21社は除外しています。
(4) 監査法人別の状況分析
経営者による評価結果を、外部監査人である監査法人の規模別に分類すると、いわゆる大手監査法人よりも中小の監査法人の方が経営者にとって厳しい結果を導いていることがわかります。
大手監査法人(新日本有限責任監査法人、監査法人トーマツ、あずさ監査法人、あらた監査法人)のクライアント企業で「有効でない」という結論を表明したのは1社(0.0%)でしたが、中堅・中小監査法人(個人会計士含む)のクライアント企業で「有効でない」という結論を表明したのは8社(1.3%)となり、その差は顕著です。
不表明とした企業を併せて考えても、大手監査法人が34社(1.7%)であるのに対して、中堅・中小監査法人は31社(4.9%)であり、中堅・中小監査法人のほうが「有効」以外の結論を比較的多く出しています。
|
有効 |
有効でない |
不表明 |
合計 |
「有効」以外の割合 |
大手監査法人 |
2,009 |
33 |
1 |
2,043 |
1.7% |
中堅・中小監査法人 |
596 |
23 |
8 |
627 |
4.9% |
合計 |
2,605 |
56 |
9 |
2,670 |
2.4% |
■ 評価対象とした業務プロセスの概要分析
内部統制報告書において、金融庁のQ&Aで示された記載例では勘定科目を記載するようになっていました。実際に評価対象とした勘定科目を記載した企業は2,600社であり、記載しなかった企業は37社と、大変少なくなりました(SEC上場企業は除く)。
なお、勘定科目を記載した企業において、いくつの勘定科目を評価対象にしたのかを分析すると、3つの勘定科目を記載している企業が最も多く、1,805社(68.5%)でした。実施基準に従って記載したことが想像されます。また記載した勘定科目数がもっとも多かったのは14個でした。
勘定科目数 |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9以上 |
件数 |
37 |
5 |
88 |
1,806 |
316 |
229 |
76 |
38 |
25 |
17 |
割合 |
1.4% |
0.2% |
3.3% |
68.5% |
12.0% |
8.7% |
2.9% |
1.4% |
0.9% |
0.6% |
詳しい内容につきましては、リリースファイルをご参照ください。
http://prtimes.jp/data/corp/1510/e471c5fb59a9967cade95e3cb0dbb4e5.pdf
上記以外の詳細な分析につきましては後日実施し、公表する予定としております。
<参考情報>
2009年3月期「内部統制報告書」において公表された「有効でない」「意見を表明しない」企業及びその内容の一覧を下記にとりまとめて公開しております。
6月26日まで公開分
http://www.lexicom.jp/knowledge/2009/06/ic20090301.html
6月29日、30日公開分
http://www.lexicom.jp/knowledge/2009/06/ic20090302.html
・本件に関するお問い合わせ
レキシコム総合研究所(株式会社レキシコム内)
担当 : 椙山(すぎやま)
TEL : 03-3500-5244
E-Mail : contact@lexicom.jp
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